声優になりたい私にとって、メソッド演技の訓練は重要ですか?
声優学校に通っている声優初心者からの質問です。
でね。
これに対する回答をすることは出来ます。
ですが、演技論(手法)に対する回答は、その回答者の主観が強く出てしまう内容だということはご理解ください。
正直に言えば、それぞれの立場の指導者が回答すべきものと考えますが、第三者的な意見も聞いてみたいとする人もいらっしゃるのでしょう。
声優業界の末席に連なる者の1人として、お話しをさせて頂きますね。
メソッド演技とは何だろう?
まず、結論からお話しします。
メソッド演技という手法の根源として、
より自然で、現実に近い演技の追求
となります。
詳細を言い出したらキリがなくなりますので、概要だけをお伝えすると「自分の役に忠実になりきることを目指す手法」と考えて頂ければよろしいでしょう。
さて、メソッド演技の方法論に関しては専門の指導者にお任せするとして、メソッド手法が表現者にとって重要か否かと問われれば、間違いなく重要であるという回答をする人が多くなるわけです。
だって、より自然でリアルな表現をされた方が、見ている側からすれば共感を受けやすいという事実もありますからね。
まして、演技というものを全く理解しない初心者からすれば、感情解放だったり、心の解放というのは、勉強になると思います。
たとえば、自分の殻を破るという点でもね!
で、それを習得するために、さまざまな練習法がありましてね。
それこそイロイロな意見がでる話だと思いますが「エチュード」もその一環と考えられるわけです。
(※違うよ!!と声高に叫ばれる指導者もいらっしゃるでしょうが、ここでは各種演技論の是非を論じる場ではないとご理解ください)
エチュードって何だろう?
エチュードを知らない方のために、一言で説明すると、
即興劇(演技)
となります。
ただ、これだけを説明するとイロイロ誤解を与えることになりますので、概要も付け加えれば・・・
エチュードとは、しっかりした世界観(あらすじ)、キャラクター設定を元に、即興的に舞台(お話し)を役者が作っていくもの、と考えてください。
私が習ったエチュードは、しっかりした設定なんてありませんでしたが・・・。
うん、それは本来エチュードではなく、インプロって考え方なんですね。
与えられる設定は概要のみで、役柄も含め役者が要素を作り上げていくのが、それになります。
ただまぁ、最近はそこら辺が「あやふや」になっている教育もお見受けしております。
きっちりした指導者の方ですと、この辺の教育は厳格に対応されておりますが、表現としての本質だけ知れば良いとするスタンスであれば、まぁねぇ・・・と思うこともあるわけです。
もしあなたが、将来的に指導者という立場を目指すのであれば、この手の論法を教示してくれる指導者に師事すべきかとは思います。
ですが、普通は声優としての向上を1番に考えていると思いますので、エッセンスだけを取り入れる教育を否定することはできないのです。
余計なところで頭を悩ます必要がないという意味では「そういうやり方もあるのだなぁ」と思った教育者をお見受けしたこともありますしね。
ともあれ、エチュード(もしくはそれに近い)の勉強が、表現を勉強する上で声優学校でも非常に多く取り入れられているのは、上記のような理由からとお考えください。
エチュード訓練は大変だ!?
で、エチュードだろうがインプロだろうが、役者が感じたままを表現していく即興劇の勉強は、役者歴が10年を超えた人たちでも、難しいという声を貰うことがあります。
ですのでね。
今のあなたが「上手くいかない」ことに悩みすぎる必要はないと思っていてください。
即興劇の良し悪しは、その時の状況で大分かわりますのでね。
そんなところで、もがき苦しまれるのはちょっと「もったいない」と思うことはあるんですよ・・・。
声優を目指すあなたにお伝えしたいこと
で、冒頭の質問にある「メソッド演技」は声優になりたい初心者に重要なのかという声の回答をすると、
表現者として感情を見せる演技訓練を望むのであれば、非常に重要
とお話しさせていただきます。
もっと具体的に言えば、
何をやっても感情がなく、読んでいるだけと言われてしまう
この様な悩みを抱えている声優初心者には、非常に有効な考え方だとご理解ください。
ただまぁ、その上で知っておいていただきたいメソッド演技のデメリットもお伝えしておかないといけない立場なのでしてね・・・。
声優はリアルだけが求められる立場ではないという現実
メソッド演技がリアルの追求であることをお話しさせていただきました。
でさ。
アニメの中には、どう考えてもリアルではあり得ない状況が存在するわけじゃないですか?
それは、外国映画でも同じ状況がありますよね?
分かりやすい例をあげれば、SFなんてまさにだと思いますが、いかがでしょう。
声優に求められるものは、リアルではなく「リアル風」であるということも、少しだけ意識しておいてほしいのですね。
表現は、リアルだけが面白いわけもなく、憧れるほどの「非現実」だってありますでしょう?
この事実を意識していただくと、メソッド演技だけが声優にとって優れた表現手法である・・・・とは、なかなか言い難いわけなのですよ。
声優の極論はエチュード屋さん!?
とは言え、エチュードも含めメソッド演技は重要なのも事実です。
その理由を端的にお話しすれば、声優が求められるものは「即興劇(演技)」なんですよ。
露骨に言えば、お仕事の台本や映像が役者の手に渡る期間は、早くても収録の1週間前、下手をすれば当日ということもあり得る話です。
舞台役者の様に「役や世界を練りあげる」という時間は非常に少ないのが実態です。
その良し悪しを議論する前に、それが声優と言う職種なのだと理解してください。
だからこそ、プロの声優に求められていることは、
瞬発力
というのも本当の話なのです。
今回はいろいろな話をしてしまいましたが、私としての結論を言わせていただければ、表現者としての訓練に無駄なことなど全くないとご理解いただきたいのですね。
その上であなたが目指すものが声優であれば、即興劇を意識した訓練を取り入れた方がよろしいかもしれないのも事実とはお伝えしておきます。
マルチなプレイヤーを目指すなら、演技手法の何もかもを認める度量は欲しいところともお伝えしておきますね!
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