評価について、教えてください。
ある先生に褒められた演技が、他の先生ではダメ出しされてしまいました。
自分が下手なのは分かっていますが、こういう場合どちらの意見を聞けば良いのでしょうか?
あー・・・ウン。
声優学校に通い始め、講義を受講する中で陥る状況の例ですね。
まずお伝えしたいこととして、この様な状況は、プロの声優の誰しもが経験していることであると理解してください。
ありがちな例とすれば、ディレクターが違えば評価も違うというところでしょうか。
ですので、どちらが正解ということはなく、どちらも言っていることは正しいと捉えておくべきです。
また、この様なダメ出しを受けた後「自分はダメだ・・・」と卑下することだけは絶対にしないで下さい。
ダメ出しも、評価の証である
自己否定を繰り返してしまうと、その後の演技に自信が持てなくなり、不安定で悲しいお芝居しかできなくなります。
何事も前向きに捉え、成長するための指導を受けていると思いましょうね!
とは言え、これでは回答になりませんから、まずは「なぜこの様なことが起こるのか」を説明していきたいと思います。
表現は点数化されるものではない
そもそも演技は、本来的に言えば「点数化」されるものではありません。
人それぞれの嗜好で、判断される内容が変わるものです。
なので、学校のテストであったり競技スポーツの様に、誰もが納得する結果が得られるものではないことはお分かりいただけますか?
あの人よりもこっちの人の方がうまいのになぁ・・・!?
テレビドラマを見ていて、その人気だったりに疑問を感じたことがある人は多いはず。
無論、配役に関してはいろいろな理由がありますが、好みは人それぞれで評価も人それぞれだということはわかりますよね?
発声の基本は、出来ていて当然
その上で、認識しなくてはいけないことがあります。
表現の中にも、今説明したような相対評価のほかに絶対評価、つまりテストの点数と同じく誰もができていないと困るものもあります。
それが「基本」です。
50音の読みであったり、拗音や鼻濁音など、表現者として出来て当たり前の部分が疎かであれば、ダメ出しを受けてしまう率は高くなるでしょう。
プロの声優である意味と意義
例えば、朗読であったりナレーションなどは表現者である声優が「何を言っているのかわからない」様に読まれてしまっては意味がありません。
滑舌不良の声優が朗読を読まれてしまったら、聞いている人たちは困ってしまいます。
だって、聞き手は台本を持っているわけではありませんので「何を話しているのかわからない」ように読まれてしまうと、物語を楽しむことなどできませんからね。
ところが、これが人間(もしくは擬人化された何か)を表現する際は話が変わります。
演技としてわざと基本部を甘く表現することもありますよね?
アニメーションなどのフィクション作品が、まさにそれです。
現在プロの声優を目指している人に対し、この話を多くは語りたくないのですが、そもそも表現に「絶対やってはいけないこと」というやり方はありません。
それこそ、声が裏返ろうが、節回しになってしまおうが、語尾に息が混ざろうが・・・です。
人間観察をすればわかることですが、いろいろな「しゃべり方」が存在します。
その中に、声優の基本を習う際「ダメ」と言われるしゃべり方をする人もいるわけです。
プロの声優が意識している事
この話をしたかったのは、プロの声優になってからの考えを知っておいて欲しかったからなのですね。
ありがちな例とすれば、いろいろな方に演技指導をされているウチに、表現が「小さくまとまりつまらない演技」しかできなくなる人がいるのです。
下手ではありませんが「意外性」がないのですね。
非常に残念な言い方ですが「代わりがいくらでもいる人材」に自らがなってしまったケースです。
人間を表現するって、基本が出来ていれば良いわけでもなく・・・。
ごめんなさい、これ以上言うと混乱されるかもしれませんので、ここまでにします。
声優初心者に向けた、演技評価の捉え方
ということで今回のお悩みを私なりに回答させていただくとするならば、
- 人によって表現の好みは違います。
- ダメ出しをもらった場合、それが基本の部分であれば修正をしましょう。
- 逆に表現(演技)の部分であれば、違うアプローチを挑戦して見ましょう。
ということになります。
また、非常に重要なことは、
否定された演技を捨てるのではなく、ストックしておきましょう!
という事ですかね。
プロの声優に求められる柔軟性
お仕事をすれば理解することでしょうが、現場で自分の作ってきた表現が、そのまま正解というわけにはいかないことなど、よくある事です。
その際、違う「引き出し」を準備しておけば、
・・・じゃあ、こっちの表現に切り替えるか!
という柔軟な対応が、できるわけですね。
表現に絶対はない!
特に、会話であれば相手からの言葉を受けリアクションをする場合、相手の演技を聞いてからでないと対応できないケースもありますよね。
表現に絶対はありません。
言葉のキャッチボールであれば尚更です。
だから、お仕事ごとにキャラクターを代えることができる声優さんという職種はやりがいのある面白いお仕事なんじゃないでしょうか?
ですので、ダメをもらった場合の対応として「じゃあこっちでやろう!」という切り替えを要求されていると理解してくださいね。
切り替えとなる表現が良く分からない人は、人間観察しましょうよ!
結構、大事なことを言ったつもりなんですけど・・・ね。